1.和名 鯨類(げいるい)/クジラ・イルカの仲間/クジラ/イルカ
2.科目 鯨目(くじらもく)=Cetaceaに属する海生哺乳動物の総称
3.学名
 
4.地方名
 
5.アイヌ語名  
6.英名  
7.ロシア名  
8形態・生態
特徴: 肺呼吸し、母親が、体内受胎して産まれた子を授乳して育てるが、体の機能は水中生活 に完全に適応しており、ふつう出生から死亡まで、その一生を水中で過ごす。多くの種 は海で暮らしているが、一部の種は河川で一生をおくる。

体毛はほぼ消滅し(一部は残っているか、痕跡を残す)、前脚はひれ状に変化し、後脚は 退化、強力な推進機関として体に水平な尾びれを持つ。また、水面での呼吸に便利なよ うに、噴気孔と呼ばれる外鼻孔が頭頂部に移動している。

現生種は、世界に2亜目、9科、約80種が知られている。うち、日本周辺の海に生息ある いは出現するのは、およそ40種(まれにしか現われないものも含む)で、北海道周辺には 2 0種ほどが現われる。

ヒゲクジラ亜目(Mtsticeti)に属するクジラは3科11種で、口内の上顎に、餌生物を漉し とるための「ヒゲ板」を備え、噴気孔は2つ穴となっている。最小種は体長6m程度だが 、 多くは体長十数メートル以上になる大型種で、地上最大の生物・シロナガスクジラもこ の仲間である。

ハクジラ亜目(Odontoceti)は6科に分かれ、鯨類の種の大半が属している。口内に「歯 」 を有し、その大きさは最小種の1.5m程度から、最大種の18mまで幅広い。噴気孔は一つ で ある。

「クジラ」と「イルカ」の呼び方の違いは、体の大きさの違いによる習慣的な呼び分け であり、学問上はいずれも同じ仲間で「鯨類」と総称される。体長およそ4mを境に、大 きいものを「クジラ」、ふつうこれより小さいものを「イルカ」と呼ぶ。

生息地: 全世界の海洋と、一部の大河とその水系に生息。鯨種により、あるいは同じ種において も生息海域、形態や生態が異なることがある。

ヒゲクジラの仲間には、より効率的な繁 殖と摂餌のために季節的な大規模回遊を行うものが多いが、ハクジラの仲間の多くは、 さほど大規模な回遊を行わないらしい。

その他: 北海道と鯨類とのかかわりは長い。道内の遺跡から、古代人の暮しにクジラやイルカが 食用や建築材等に利用されていたことを示す遺物が見つかっている。先住民のアイヌ文 化において語り継がれるクジラ・イルカの伝承、偶像、クジラの名を持つ地名、捕鯨や 「寄りクジラ(何らかの理由で海岸に流れついたクジラや、漂着したクジラの新しい死 体 )」での鯨肉・鯨油等の利用も知られている。

戦前は、北方領土の色丹島や択捉島に数箇所の捕鯨基地があった。戦後は、道内に10箇 所ほどの沿岸捕鯨基地が設けられ、操業していた。現在も北海道における鯨肉需要は若 干あり、調査捕鯨による副産物のミンククジラの鯨肉の流通、国際捕鯨委員会の捕獲規 制対象外の種であるツチクジラ、および小型ハクジラ類の沿岸海域での捕獲・水揚げ・ 加工が函館、網走等で行われている。

近年日本各地で、これらの消費的利用とは別に、生きている野生の鯨類を観察する観光 としての「ホエールウォッチング(クジラ・イルカウォッチング)」の開発がすすめられ 、道内では1989年に室蘭の地球岬沖で、その後、1994年に道東の根室海峡でも事業が始 まった。

近年の観察や聞き取り調査の結果、最近、根室海峡の日本側海域に出現する鯨類は主と して次の8種である。
ヒゲクジラ亜目: ミンククジラザトウクジラ
ハクジラ亜目: ネズミイルカイシイルカカマイルカシャチツチクジラマッコウクジラ
9.利用

10.メッセージ
今も昔も、クジラ・イルカは、わたしたちの暮しにいろいろな意味で役立ってくれてい ます。しかし、彼らの生態については、わからないことがたくさん残されています。

標津町が接する根室海峡は、陸近くでクジラ・イルカが多数観察できる貴重な海域のひ とつであり、同時に、ゆたかな漁場でもあります。21世紀にも、この海をクジラ・イル カと共有してゆくために、彼らに対する理解が少しでも深まるよう、読者の皆様も暖か な目で注目してくださいね!

11.写真・図版
根室海峡のクジラ・イルカ
左上:シャチ     右上:ツチクジラ
左中:ミンククジラ  右中:マッコウクジラ
左下:ザトウクジラ  右下:左:カマイルカ、中:イシイルカ、右:ネズミイルカ

図:根室海峡で見られるクジラ・イルカ (著作:佐藤晴子)


12.参考図書 笠松不二男. 1999. 「東京水産大学講義ノート クジラの生態と管理」. 東京水産大学.
笠松不二男、宮下富夫. 1991. 「鯨とイルカのフィールドガイド」. 東京大学出版会.
佐藤晴子. 1998. 「最近、根室海峡に出現する鯨類について」(未発表資料)
「日本動物大百科2 哺乳類」 1996. 平凡社.

13.著者 筆者名: 佐藤晴子
連絡先: 東京都千代田区九段南2-5-9-502
電子メール: DZF14072@nifty.ne.jp
執筆日: 1999/10/10.

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