1.和名 ザトウクジラ
2.科目 鯨目ヒゲクジラ亜目ナガスクジラ科に属する海生哺乳動物
3.学名
Megaptera novaeangliae
4.地方名
 
5.アイヌ語名  
6.英名  
7.ロシア名  
8形態・生態
特徴: 体長12-14m。細長い胸びれを持ち、その長さは体長の3分の1にもなる。北半球上顎上面 と下顎先端付近に、たくさんの"こぶ"状の突起がある。下顎の「畝(うね)」の間隔は広 く、ナガスクジラ科の中で、本数がもっとも少ない。背びれは小さく、背中の後方のふ くらみの上に位置する。
背部と体側面の大部分は黒色、下顎から腹部にかけて、不規則 な白黒模様がある。長い胸びれの下面は白色、尾びれの裏面(下側)には、個性的な白黒 の模様があり、個体識別の自然標識のひとつとして利用されている。

「歌」をうたうクジラとして有名で、繁殖期の海域では、オスの個体たちの"歌声"が海 中に響く。
また、索餌海域では、有名な餌のとらえ方の代表例として、海中で噴気孔か ら排出した気泡を利用して餌生物を取り囲み、水面付近へ追いやり、一気に飲み込む「 バブルネット・フィーディング」を行う。
長い潜水に入る直前に、尾びれを水面上に持ち上げるが、必ずそうするわけではない。
ザトウクジラ
写真:ザトウクジラ (著作:佐藤晴子)

生息地: ほとんど全世界の海洋に分布する。

その他: 分布海域は広いが、過去の近代捕鯨によってその生息数は激減した。現在の生息数は、 全世界でわずか2万数千頭ほどらしい。
沿岸の繁殖海域や索餌海域に集まるザトウクジ ラ は、その活発な行動や、比較的ゆっくりとした動作などから、ホエールウォッチングの 好対象種として世界各地で親しまれている。日本でも、繁殖海域にあたる東京の小笠原 諸島と沖縄の慶良間諸島で、クジラの生態の理解と保護、そして観光とを併せたホエー ルウォッチングが行われている。

最近の根室海峡の日本側では、全域で春から秋にかけて年に数回程度のほぼ信頼のおけ る目撃情報がもたらされる程度で、見かける程度は「まれ」である。また、根室市の根 室海峡側では同種の漂着記録(「根室市博物館開設準備室だより」12号,1997. および 根室市学芸員・近藤憲久さんによる)がある。標津沖では、1996年7月に2頭の群れが観察 ・撮影された。

鳴音の特徴: ザトウクジラは、冬に南の暖かい海で繁殖をします。この時期、雄のザトウクジラがうたう「ソング」と呼ばれる声は、いまだに人々の心をとらえて離しません。
冬になると、小笠原だけでなく、ハワイやメキシコ沖でも、ザトウクジラの規則的な声がなんども繰り返されます。
北太平洋では、どこでもおおむね同じパターンの「ソング」を歌うことが知られており、どこで「歌合わせ」をしているのかが、大きな謎です。
「ソング」の役割には、雄の呼吸能力の雌への誇示、雌の誘因など、諸説ありますが、完全な説明には至っていません。

ザトウクジラの声 再生ボタン(>)を押して下さい。

・録音:東京都小笠原村父島周辺海域
・時期:1997年3月
・協力:小笠原海洋センター、水産工学研究所

9.利用

10.メッセージ
根室海峡でザトウクジラを見かける幸運に巡りあった方は、ぜひとも写真やビデオの映 像記録を残し、北太平洋で行われているこのクジラの生態調査の進展に協力しませんか ?

11.写真・図版
ザトウクジラ
上図:ザトウクジラ (著作:佐藤晴子)


12.参考図書 アンソニー・マーティン(編著)、粕谷俊雄(監訳). 1991.「クジラ・イルカ大図鑑」.平凡社.
笠松不二男、宮下富夫. 1991. 「鯨とイルカのフィールドガイド」. 東京大学出版会.
加藤秀弘(監修). 1996. 「わくわくウオッチング図鑑9 クジラ・イルカ」. 学習研究社.
佐藤晴子. 1998.「最近、根室海峡に出現する鯨類について」(未発表資料)
13.著者 筆者名: 佐藤晴子
連絡先: 東京都千代田区九段南2-5-9-502
電子メール: DZF14072@nifty.ne.jp
執筆日: 1999/10/10.

鳴音に関して: 赤松友成(水産庁水産工学研究所技官)
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