5.球根類 (1)グラジオラス 原産地 地中海沿岸 南アフリカ 球根から太い茎をのばし茎の頂きに花色の豊かな大輪の花が密生する代表的な春植え球根のひとつである。この花は種類が多く、約200種類といわれ、草花類の中でもバラ、ダリアなどと同じように改良がどんどん進み、10年前の品種は現在栽培されていないといわれている。 育て方 グラジオラスは12〜13度Cの気温があれば芽が出るので、5月中旬〜下旬頃に直接植えてもよい。5月に植えると80日から90日ほど、6月に植えると70日ほど、7月に植えると60日ほどで花が咲く。気温が高くなってから植えると花がつくということですが、草丈が低く花の数も少ないのでなるべく早く植えた方がよい。 土は特に選ばなくてもよいが、水はけのよいよく肥えた土の方が草丈も伸び、花も多くつく。日当たりが良くないと育ちも悪いし、花つきも良くない。土をよく耕し、堆肥など有機物を入れて15p間隔に植える。覆土は球根の3倍ほどにする。肥料は、追肥として油粕、骨粉を半々に混ぜたものを一株に一握り位、蕾が出るまで2〜3回ほど入れてやるとよい。草丈が50pから80pにもなるので風で倒れることがある。根元に土寄せをし、棒を立てて結ぶなど工夫が必要である。 グラジオラスはなんといっても切り花にするのが最高の利用法である。蕾の時に切り、花瓶に入れても最後まで花が咲き、しかも豪華である。切り花にするとき注意することは、葉を残して切ることである。茎の根元から切ると葉も切ることになり、切った後に葉が1枚も残らず、球根が大きくならず次の年に植えても花が咲かなくなるからである。 秋に球根を掘り上げ、よく乾燥して凍らないように貯蔵しておく。球根を掘ったときは球根の付近に小さな球根(木子)が付いているので球根と一緒に貯蔵しておき、春にまとめて植えておくと植えた年には花は咲かないが、秋に掘り上げると花が咲くくらいの大きさの球根に育っているものもある。このようにして、どんどん増やすとよい。 (2)クロッカス 原産地 地中海沿岸 雪が解けるに先がけて咲き始める寒さに強い球根である。花畑、鉢植えに利用される。草丈が短いので一カ所にたくさん育てると、花を敷き詰めたようで見ごたえがある。花の少ない時期に咲く花なので目立つ。 育て方 日当たりの良いところなら、土も選ばないし育てやすい花である。 植える時期は10月始め頃、たくさん(10球〜20球)5pほどの間隔で深さ4pから5pに植えるとよい。植えるとすぐ根が出るので、土が凍る前にハイポネックス(液肥)1000倍液を2回ほど与え、花が終わったらすぐ油粕と骨粉を半々くらいに混ぜた肥料をばらまきにするとよく育ち、次の年にいい花を咲かせる。葉は7月頃枯れるが、3年くらいは植えたままにしておいてもよい。 大きな球根は、水栽培にも使うことができる。 (3)スイセン 原産地 日本 中国 地中海沿岸 丈夫で育てやすい秋植の球根で、寒さに強い花であり春になるとどこの庭でもよく見られる。標津では見たことはないが、本州の暖かい地方では野生のスイセンを見ることができる。花畑でも鉢植えでもよく、切り花としても利用される。 育て方 植える場所は、花が咲くまでは日当たりが良く、花が終わったら半日陰がよいといわれているが、そんな都合のいい場所はなかなか見あたらない。 日当たりに関係なく育つと考えた方がよい。落葉樹の下でも育つ。日当たりが悪いとヒョロヒョロ弱々しく育ち、いい花は咲かない。 土は特に選ばないが、土が肥えていると伸びすぎて葉ばかり目立つようになり、花柄が倒れてしまう。肥料は、芽が出始めたころに少し与えるとよい。 増やし方は、植えてから3年くらいはそのまま育てるが4年過ぎたら夏に葉が枯れるので、葉が枯れたら掘り上げ球根を乾燥して保存し、9月に1球ずつに分けて植えるとよい。しかし、1球では見栄えがしないので3球くらいまとめて植える方法がある。 植えるときは、球根の3倍ほどの土をかけておく。 (4)ダリア 原産地 メキシコ グアテマラ山岳地帯 日本では明治以前から育てられているダリアは、原産地がメキシコなので高温長日を好む花であるが、長い間に品種改良され夏から秋まで楽しめるようになった。品種の数は数えきれないほどといわれている。春植の球根の代表的な花のひとつで、標津のように寒く日中と夜間の気温の差が大きいところではいい色の花を咲かせてくれる。 育て方 日当たりと風通しのよい場所がよい。 土は特に選ばないが、水はけのよい土の方がよい。 5月下旬〜6月上旬頃植えるが、地温が10度C以上にならないと芽が出ないので、気温が高くなってから植えた方がよい。 植えるとき球根の芽が出ていることが多いが、芽が出ていなくても植えてから芽が出ることが多い。しかし、芽が出るところは茎の基で、芋の部分からは芽が出ないので茎の基のついていない芋を植えても無駄である。球根は分けて植えるが、分けるときは茎の基をつけて刃物で切るようにする。分けるのが難しいときは無理して分けないようにする。 植えるときは深さ40p以上、幅50p程度掘り、底に堆肥、油粕、骨粉など有機物を入れて埋めもどし、球根を斜め45度の角度に置き土を10pほどかけておく。
肥料は育ち始めたら液肥を2回程度やるとよい。 花が咲き、1番花が咲き終わったら適当な長さに切り、枝を伸ばして花を咲かせるようにすると、霜が降るまで咲き続ける。しかし、標津ではそのまま育てても霜が降るまで咲き続けるので、手をかけなくてもよい。 大輪の品種を育てて大きな花を咲かせるときは、花の数をたくさん付けるとどうしても小さな花しか咲かない。枝を切って花の数を少なくするとよい。大輪の花が咲いたときは、花柄が割合弱いので折れることがある。棒を立てて結んでおく必要がある。 小輪、中輪は切り花にしてもよいが、花持ちはあまりいい方ではない。 豪華な花で目立つので、ぜひ育ててみたいものである。 球根の貯蔵であるが、霜が降りたら球根を掘り上げ3日ほど乾燥する。土のついたままダンボールに入れ、5度C位の凍らないところに置くとよい。温度の高いところに置くと、芽が伸びすぎてしまう。0度Cのところにおくと凍って腐るので気を付けるようにする。 (5)チューリップ 原産地 ヨーロッパ 北アフリカ 球根類の中でも育てやすい花である。花畑、鉢植え、切り花と利用方法も多い。 色も豊富で優雅な姿、春の花畑にはぜひ欲しい花の一つである。品種は現在2800種あるといわれている。 育て方 この花は集団に植えるとよく見栄えする。花畑に育てるときは、同じ品種を10球より20球、20球より50球とたくさん植えるほどよい。違う品種をばらばらに育てると、花が咲く時期、草丈、花色が違い、ちぐはぐになってしまう。 植える場所は、日当たりの良い場所がよい。日陰ではいい花は望めない。土は砂混じりの土が理想的だが、どんな土でも育つ。ただ、酸性に弱いので標津のように酸性が強い土は石灰(炭カル))を入れて酸性を弱めておいた方がよい。 植える時期は10月頃である。 植え方は花畑を30pほど掘り、骨粉、リン酸肥料を土とよく混ぜて埋めもどし、10〜15p間隔で、深さ10pほどに植える。根が出る温度は15度C位なので10月ころ植えるとよいのである。 雪解けとともに伸びるので、油粕と骨粉を半々に混ぜた肥料を与える。 花が終わったら花首から切って種がつかないようにする。 切り花をするときは、葉を1・2枚残すようにすると球根が育つ。葉を残さないと球根が小さいままになり、次の年花が咲かない。 花が終わり、葉がやや黄ばんだときに掘り上げ日陰に乾かしておく。球根はネズミの大好物なので、箱に入れて物置に保管するとネズミに食われるので注意が必要である。 チューリップの球根はどうしても病気にかかる。バイラス病、ボトリジス病であるが、予防が大変なので、3年に1度は病気にかかっていない球根を購入するのが一般的である。 植えたままにしておいても2・3年は花が咲くが、やがて葉だけになって花が付かなくなる。病気のためである。 鉢植えするときは、球根を2/3ほど埋め1/3は出しておくとよい。5号鉢(約15p)に3球程度植えるとよい。 (6)ムスカリ 原産地 地中海沿岸 西南アジア まっすぐ伸びた花茎の先にブドウの房のような球形の小さな花が群がって咲く。寒さに強い球根の花である。花畑の縁取りや鉢植えなどにも利用できる。春早く咲く花なので花畑に欲しい花のひとつである。 育て方 日当たりを好むので日当たりの良いところに植えた方がよいが、半日陰でも育つ。土は特に選ばないが水はけのよい土がよい。 4年くらいは植えたままでよいが、4年目の秋10月頃球根を分けて植え替えた方がよい。球根が小さいことと群生しないと見栄えしないので5p間隔でたくさん植えるとよい。 鉢やプランターで育ててもいいものである。 花が終わると、葉が黄色になるので刈り取った方がよい。 肥料は、春早く、芽が出始める頃油粕と骨粉を半々に混ぜたものを根元にばらまいておく程度でよく育ち、花を咲かせてくれる。 (7)モントプレチア(ヒメヒオウギズイセン) 原産地 南アフリカ グラジオラスに似ているが花が小型で、だいだい色の花が横向きに咲く丈夫な花である。 育て方 春に球根を植える。植える場所は、水はけのよい有機物がたくさん入った土がいいので、火山灰の土には堆肥をたくさん入れて育てる必要がある。日当たりは良い方がいいが、半日陰でも育つ。 植え方は群生させた方がよいので、一カ所に10球とか20球、たくさん植える。 深さ6pほどに植え、植えた後は3年くらいそのままにして育てると、株がどんどん増えて見栄えが良くなる。4年目くらいになると株が増えすぎるので、春に掘り上げ球根を分けて植えるとよい。 芽が出たときに、油粕と骨粉を半々に混ぜた肥料を根元にたっぷり与えれば後は雑草の管理だけでいい花がたくさん咲く。 花畑や切り花がよいが、切り花は長持ちしない。 (8)ユリ類 原産地 日本 アジア ヨーロッパ ユリの花は美しい花の代表の一つに数えられている。一般に育てられているのは十数種類ほどであるが、品種は数え切れないくらいある。これらのユリの80%は、日本やアジアに自生しているもので、日本の自然によく合い、球根は輸出されている。標津で自生しているユリは、日当たりのよい道路の縁や海岸に咲くエゾスカシユリ、山林の木陰の半日陰に咲くフルマユリ、やや海岸や湿地の半日陰に咲くクロユリなどである。そのほか、真っ赤な花がたくましく咲くオニユリもよく見られる。このユリは食用にされている。北海道に多く自生しているというが、標津での自生は見たことがない。 育て方 1)エゾスカシユリ 日当たりと風通しのよい、よく肥えた水はけがよい、しかも保水力があって表面が乾燥しない土がよい。火山灰の土には堆肥を入れ、土が固まらないようにした方がよい。しかし、現実には舗装道路の脇にも自生し、6月頃花を見ることができる。悪条件の中でも花数こそ少ないが咲いているのであまり気にしなくともよい。 増やし方は、9月〜10月に球根(りん片)を掘る。球根が2つ3つ付いている場合は一つずつ分けて球根を乾燥させないようにすぐ植えるとよい。 球根にかける土は、球根の高さの3倍位が標準であるから10p〜15pになる。 肥料は、雪が解けるとすぐ油粕と骨粉を半々位に混ぜた肥料を1球に1〜2握りほど与えるとよい。肥料が不足したり乾燥がひどいとウィルス病にかかることが多いので、アブラ虫駆除のためにオルトラン粒剤を根元に散布し、スミチオン、エストックなどで消毒した方がよい。 2)オニユリ 日当たりのよい場所がよく、火山灰土の場合は堆肥を入れて、土が堅くならないようにする。泥炭地でよく育つ。 肥料や増やし方はエゾスカシユリと同じでよい。オニユリは、茎と葉の間に木子(小さな球)が付くので、それを植えておくと2〜3年後には花を咲かせてくれるので利用した方がよい。 3)クロユリ 本州では高山帯にしか自生していないので、高山植物の一つにもなっているようだが、北海道では海岸や平地にも自生しているので一般的な野生の花としてみている。 火山灰の土や砂の多い土のような水はけがよく、有機物がたくさんはいっている土がよい。ひどい湿地には育たないが、多少の湿気の中ではよく育つ。 場所は日当たりが良くても、半日陰でもよい。花が終わったら半日陰のところがよいとされているが、現実にはそのような場所は少ない。 増やし方は、ほかのユリと同じで球根で増やす。 肥料は、雪が解けたときと花の咲き始めに、油粕と骨粉を半々に混ぜて、一株に一握りほど与えると球根がよく育つ。植え替えは3年目くらいがよい。 4)クルマユリ 山林の日光がうららかに当たる場所がよいが、半日陰でもよい。 土は、よく肥えた有機物をたくさん含んだ固まらない土がよい。火山灰土には有機物(堆肥など)を多く入れて育てるとよい。 増やし方は、ほかのユリと同じであるが、球根を掘るときりん片がはがれやすいので気を付ける。 ユリ類は何年も植え替えしないで育てると病気になり、やがて消えてしまうので3年〜4年に1度は場所を変えて植え替えるようにする。 |
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