4.多年草
(1)アスチルベ


原産地 ヒマラヤ  中央アジア  日本

アジアの温帯に自生している。花畑で育てる園芸種は白、桃、紅色の花で根から出た葉の先に粟粒のような小さな花が穂のように群がって咲く。草丈は低いので40p程、高いもので1m位になる。

花畑や切り花に利用されるが、切り花にすると水揚げがあまり良くないので長持ちしない。

丈夫で寒さに強い多年草なので、花畑に似合う花の一つである。


育て方

日陰でも育つので落葉樹の下に植えてもよいが、日当たりはいいほうがよい。乾燥には割合弱いが、湿気の多い湿地帯では育たない。湿気のあるところを好む草花といえる。

土は特に選ばないが、よく肥えた土の方がよい。標津のような火山灰土には堆肥を十分入れて、土をよく耕し肥えた土にしてから植えるとよい。

増やし方は、種をまいて増やすのではなく、株分けをして増やす。株分けは秋9月頃がよいが、春芽が出始める6月中旬でもよい。根は堅く固まっているので大きなドライバーなどで根を3つ程に分け、根の先を軽く切りつめ深さ30pの穴を掘って堆肥を入れて梅戻し、芽を5pくらい土に入れるように植えるとよい。植えてから軽く根元を踏んでおく。肥料は月1回ほど油粕、骨粉などの有機肥料とできればリン酸、カリ肥料を少し多く与えるといい花を咲かせてくれる。


(2)アルメリア

原産地 ヨーロッパ  北アメリカ  千島

緑の針山にピンクのかんざしを挿したように、たくさんの花が咲く。小型の花であるが、寒さに強い。丈夫な多年草で花畑に植えると目立つ花の一つである。鉢やプランターなどの容器で育ててもいい花を咲かせてくれる。

育て方

株分けで増やすのが普通で、植え替えは花が終わったすぐ後にするとよい。芽を2〜3つつけて株分けして植える。根のない芽でも植えておくと芽が出るので、捨てないで植えるようにする。

アルメリアは、1本の太い根(直根)が下の方で枝分かれしていて株の元から根が出ていないので、この太い根を裂いてそれぞれに芽が付くように株分けするといい結果が出る。

株分けした芽は乾燥させないようにして、古い葉や枯れた葉をとってから植えると根が出やすい。

水はけのよい土がよく、火山灰土はよい。粘土のように堅くなる土はよく育たない。日陰では弱々しく育ち、花つきも悪くやがて自然に枯れてしまうことがある。日当たりと風通しのよい場所に植えるようにする。南向きの傾斜地に植えることを勧めたい。

肥料は株の周りに油粕と骨粉を半々くらいに混ぜて2〜3株に1握りほどばらまきにしておけばよい。2〜3年はそのままで育て、4年目には株分けをする。株分けの時期は花が終わってすぐの方がよい。株分けをしないでそのまま長い間置くと、やがて株の中心部から枯れてくる。

(3)ジャーマンアイリス

原産地 地中海沿岸  ヨーロッパ

よく目立つ花で見事に裂く、寒さに強い多年草である。花の色は白、紫、桃、褐色と多く、一つの茎に4〜5つものハナショウブに似た大きな花を咲かせる。

丈の低いものは40p以下、高いものは1m近くにもなる。花畑に植えるが切り花にしてもよい。

とにかく丈夫な花である。乾燥にも強く日当たりを好むが、1日4〜5時間ほどの日当たりで十分に育ち、花を咲かせてくれる。

土は、水分の多い湿地や酸性のものは好まない。標津の土は酸性が強いので石灰(炭カル)と堆肥を十分入れ酸性を弱め、土を肥やして育てるとよい。

増やし方は、種をまいて増やすのではなく株分けで増やす。株分けは花が終わった後8月下旬〜9月上旬がよい。根(根茎)はつながっているので、芽を3つ以上付けて分けることが大切である。1芽だけつけて株分けすると、次の年に花が咲かないだけでなく、4〜5年も花が咲かないことがある。

株分けして植えるときは葉を20p程に切りつめ、根(根茎)が浅く土の中に入るくらいの浅植えにする。深植にすると根が傷んで育ちが悪くなる。

肥料は、春に芽が出た頃油粕と骨粉を半々に混ぜたものを根元に一握りばらまきしておけばよい。

花が雨に当たると傷みやすい欠点がある。


(4)オダマキ

原産地 北海道に自生しているミヤマオダマキの改良種といわれている。

花の咲いている期間は短い。花の色は多く、紫、青、黄、白、紅などがあり色がはっきりしていて目立つ花の一つで寒土に強い多年草である。一般的に花畑で育てているオダマキは西洋オダマキが多く、草丈も高く花も大きい。

花畑、鉢植え、切り花と利用法は多いが、切り花は水揚げが良くないので長持ちしない。


育て方
 

種をまいたはずがないのに、いつの間にか芽が出て育ち花が咲いていることがある。丈夫な花の一つである。寒土に強く、どんな場所でも育つので土や場所は選ばないが、肥えた土で日当たりのよい場所で育てるのが理想的である。日当たりが悪いと、背が高く弱々しく育ち、風で倒れることがあるので、低く育てたいときは火山灰の肥料分の少ない土で、日当たりのよい場所に育てるとよい。

増やし方は、株分けでもよいが、種をまいて増やした方がいい結果が出る。秋にまくと翌年の春に芽が出て花が咲くこともあるが、たとえ咲かなくても次の年には必ず咲くのでそのままにしておけばよい。種は春5月頃まくとよい。

苗が混んでいる場合は移植するか、間引きをしなければならないが移植には強い方でない。根が深い苗なので注意して掘らないと根が切れてしまうことがあるので、苗の掘り起こしには特に注意して移植しなければならない。

株分けは、春、芽の出はじめに芽を2〜3つ程つけて株分けする。植えるときは浅植のほうがよい。深植にすると枯れることがある。

肥料はやらなくても十分育ち、いい花を咲かせてくれる。

日常の手入れは草取りくらいで、特に必要はない。手の掛からない花である。寒さには強いが乾燥にはやや弱い。標津向きの花の一つである。

丈の低いミヤマオダマキというのがある。この花は一般的には高山植物といわれているが、標津では川沿いや草原の日当たりのいい場所に自生している。自生種は根から掘り起こして持ってくるのではなく、種を少々取ってきてまけば芽はいくらでも出て、次の年には花を咲かせてくれる。植えたままにしておけば、種がこぼれて自然に増える花である。 山や野原に咲いている花はそのまま咲かせておいてほしい。
 

(5)キキョウ

原産地 日本 中国

秋の七草の一つで、日本全土の日当たりのいい草原に自生しているキキョウは、あるのかないのかわからないが、見たことはない。

まっすぐ立って、茎の先端にラッパ型の花が咲く、寒さに強い多年草である。

花畑にもよいが、多くは切り花用として利用されている。

花は紫、白、絞り、八重咲きなどで紫の花が多い。早く咲く早生種、遅く咲く晩生種、中間に咲く中生種がある。

育て方

土は肥料分の多い肥えた土の方がよいが、火山灰の土でもよく育つ。しかし、肥料分の少ない土だとあまり大きくならないし、花つきも良くないが、丈夫な花なのでそれなりに育ち、花も咲いてくれる。

植える場所は日当たりが良くないと弱々しく育ち、花つきも悪くなる。

根が伸びる花なので植えるときに穴を掘り、穴の底に堆肥を入れ、油粕、骨粉を半々に混ぜた肥料を一握りほど入れて土をかけ、芽がやや土の中に入る程度の浅植にする。

育ちがよく肥料分を欲しがる花なので、大きく育てたいときは5月〜6月に油粕、骨粉を半々に混ぜた肥料を一株に一握り程度追肥として入れるとよい。小さく育てるときは、肥料をやらなければよい。

増やし方は種まきと、株分けとがある。種は秋にいくらでも取れるので、採ったらよく乾燥して春まで保管し、5月中旬頃花畑に直接まいてもいいし4月中旬〜下旬に鉢や箱に植えると10日位で芽が出る。芽が出たらハイポネックス(液肥)の1000倍液をやり、6月中旬頃花畑にやるとよい。うまく育てると秋に咲くこともあるが、秋に咲かなくても次の年には必ず咲く。

株分けをして増やす時は、秋に株分けをしてもよいが、寒い標津では春6月頃の方が安全である。植えるときは堆肥、油粕、骨粉を与えるとよい。

植えてから4〜5年たつと育ちも悪くなるので、株分けするか種で増やすようにする。

(6)キク

原産地 日本 中国

どこの花畑にも多い少ないはあるが必ずといっていいほど植えられている。誰でも知っている花の一つである。

北半球で育てられていて、種類は200種位もあるといわれている。

切り花にすると長持ちしてよく、花畑に植えても花色が多いので、目立つ色の花を植えておけば豪華な花畑になる。

夏キク、8月咲き、早生ギク、中生ギク、晩生ギク、寒ギクなど、花の咲く時期によっても分けられているし、花の大きさによって大輪ギク、中輪ギク、小ギクなどにも分けられる。また、食べるために栽培されている食用ギクなどもある。

日本古来の和ギクは主に大輪で、日本からヨーロッパなどに輸出されている。切り花用に改良された小ギクもある。

キクは本来短日生の植物といって、昼の時間が短くなると花が咲く代表的な植物の一つであるが、小さな花が咲く夏ギクや8月咲きなどは昼の時間が長い8月頃に咲くように改良されている。本州で夏ギクは6月から7月頃に、8月ギクは8月に咲くが、寒い地方では少々遅れて咲くようである。
 
育て方
 
植える場所は風通しと日当たりのよい場所がよい。日当たりが悪いと弱々しく育ち、花つきも悪い。風通しが良くないとアブラムシがつく。

土は有機物(堆肥や草など)のたくさん入った肥えて水はけのよい土がよい。鉢植えの場合は、いい土を確保することがいい花を咲かせる基本になるので、腐葉土を使うようにする。

増やし方は、株分け、挿し芽でいくらでも増やすことができる。小ギクは株分け、中輪は株分けと挿し芽、大輪は挿し芽の方がいいようである。

株分けは、花が終わったときなるべく早くする方法もあるが、寒い標津では冬の寒さで苗が枯れることがあるので、春の芽が出始めた頃に株分けや挿し芽をした方が安全である。
しかし、春に株分けをすると、小ギクは草丈が短くなることがある。

キクは株分けや挿し芽をしないで、何年もそのままにして育てたり、同じ場所に株分けや挿し芽をすると4〜5年で草丈が低くなり、下の方の葉が枯れ、花が少なくなり、やがて消えてしまうので3〜4年目には株分けや挿し芽を場所を変えて行うことが大切である。

肥料は、追肥に油粕、骨粉を半々に混ぜたものを1株に一握りほど入れてやるようにする。肥料分が不足すると、花つきが悪くなる。 

害虫が多く、特にアブラ虫がつきやすいので、アブラ虫の予防のためにオルトラン剤を早めに散布した方がよい。


(7)クレマチス(テッセン・カザグルマ)

原産地 ヒマラヤ 日本 中国に25種ほど自生している。

春の花が大体終わりに近づいた頃に、風情豊かに咲く。つる性の寒さに強い多年草である。花畑というより庭や垣根などに育てるとよいが、鉢植えもおもしろい。

花の色は、白、紫、赤紫などで濃い色や薄い色がある。花びらが6枚あるのがテッセン、8枚あるのがカザグルマといっているようである。標津でも見られるが、一般的に見られるのは中国系かいろいろ交配して雑種になったものが多いようである。
 
育て方

普通の花畑の土でもよく育つが、理想的には肥料分の多い土で酸性が弱い方がよい。火山灰土や砂の多い土には有機物(堆肥や草など)を入れ、酸性の強い標津の土には石灰(炭カル)を入れ、よく耕して育てるとよい。

植えるときは、深さ幅とも40pから50pくらい掘り、穴の底に堆肥や広葉樹の葉、台所から出る野菜や魚くずなどの有機物を入れ、踏んでから土を入れ、浅植にするとよい。

この花は、植えたときには大株のものでは花が咲くことがあるが、ほとんど咲かないか、2年目・3年目と株が大きくなってくると立派な花をたくさんさかせてくれる。

移植はあまり好まないので、なるべくしない方がよい。植えるときにしっかり有機物を入れる必要がある。

苗は、春5月頃花屋から買って植えるとよい。つる性の花なので、つるを十分にのばすことによって株が大きくなる。つるが伸び始めたら油粕、骨粉を半々位に混ぜた肥料を一株に二握りほど、月1〜2回やるとよい。

春の芽が出る前に前年伸びたつるの細いものは根元から切り、太いつるに支柱を立てて結びつけて育てる。

植える場所は、日当たりの良い道路に面した垣根や居間からよく見えるところがよい。

増やし方は、枝伏、接木、取木、株分け、挿し木、種まきがある。春、6月上旬〜中旬前年出たつるに土を浅くかけておけば、芽が出るし根も出るので、秋の9月頃までに移植すればよい。このような方法を枝伏法といっている。

つるが3〜4mも伸びるので、しっかりした支柱を立てないと支柱が風に倒され、後始末が大変である。




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