(9)病気や害虫の防除 植物には病気や害虫がつき、時には全滅してしまうこともある。 植物が病気になるときは、曇天や雨が続いた時、蒸し暑い日が続いたとき、風通しが悪く日当たりの悪い場所に植えたとき、水のやりすぎ、肥料不足、窒素肥料過多で弱々しく育ったとき、同じ場所に同じ草花を何年も続けて育てたときなどである。自然現象が原因で病気になったときは諦めもつくが、管理が原因で病気になるとガッカリなので注意したい。 同じ草花でも、品種によって病気に強い弱いがあるので、草花の特徴をよく調べて育てることも大切である。 病気は何といっても予防が大切である。しかし、予防といっても薬を散布して予防するだけではない。例えば、苗づくりの時に混んだまま間引きも移植もせずに放置すると、風通しが悪くなり、苗立枯病になる。種をまくときに消毒しないと、時にはカビ病になって全滅したりする(主に高山植物)。キクを5年6年と移植しないで置くと花が咲かなくなって、やがて消えてしまう。薬だけに頼らず、病気にならない栽培の方法を考える必要がある。 プランターや鉢などの容器で草花を育てるときは、一度使った土は全部捨て、新しい土で育てた方がよい。というのは、病気の予防の一つである。 図 苗立枯病 キク
苗を混んだままにしておくと、風通し 小キクは何年も同じ所に植えておくと が悪くなり、苗立枯病になることが多 病気になる。4〜5年に1回は移植した い。 方がよい。 病気には、伝染するものと、しないものとがある。伝染するものは、細菌・カビ・ウィルスが原因の病気が多い。伝染する病気にかかったときは、ほかの株に病気が移らないうちに防除の必要がある。伝染しない病気は、その株だけを抜き取って捨てればよい。しかし、病気にかかったとき、病名、伝染性を判断することは難しい。 害虫であるが、害虫は植物の健康に関係なくつき、天候や気温などによって大発生することがある。しかも、いつ発生するかわからない。ワタノメイガがつくと一夜で葉を全部食われてしまうことがある。ハダニ類は雨が少なく乾燥するときに多く出る。アブラ虫類が出たときは、オルトランやダインストン粒剤を植物の根元に数日おきに4〜5回ばらまきにする必要がある。 球根類の貯蔵の時、チューリップはネズミの好物なので気を付けたい。 (10)農薬の上手な使い方 1)殺虫剤と殺菌剤 @殺虫剤 農薬は、殺虫剤と殺菌剤に分けられる。 殺虫剤は、害虫を駆除する薬で、接触剤といい薬が虫に付くと死ぬ薬で、虫に付かないと死なない。スミチオン・マラソン・DDVP・NACアクテリック剤などがある。 もう一つは、乳化中毒剤といい薬が付いた植物の葉や花・茎を虫が食うと中毒死する薬で、長期間効果があるので、予防の効果もある。ホカホス乳剤・ティプテレックス・パタン剤などがある。 三つめは、浸透殺虫剤といい薬が水に溶け、植物が吸い上げて植物の体に入り、害虫がその水分を吸うと死ぬ薬で、有効な成分が長期間植物中にあること、使い方が簡単で効果が確実なこと、害虫の体が見えなくても予防に使えるなどの利点がある。オルトラン・ダイシストン・ジメーエード・エカチン・アンチオなどがある。 A殺菌剤 殺菌剤は、予防に使うものと直接病原菌を殺すものとがある。殺菌剤には、種、球根などの消毒、土の消毒に利用できるものもある。 予防に使う場合は、植物に病気が出る前や周りの植物に病気が出たとき、病気がほかの健康な植物に伝染しないように散布する。 薬の特徴としては、長期間効果があり多種類の植物に散布できる、薬の害が総じて少ないことなどである。銅製剤(銅水和剤)などがある。 殺菌する薬は、病気が出たときに散布する薬で、病気の伝染を抑え,菌を殺すものである。ベンレート・トップジンMなどの水和剤(水に溶かして散布する薬)やストレプトマイシン剤などがある。 いずれにしても、病気ので始めに散布すると効果が大きい。マンネブダイセン・ダイセンステンレスなどの水和剤は、予防と殺菌に効果があり、薬の害も少ない。 石灰硫黄合剤などは、よく効くが薬の害があるので、春の芽だし前と初冬の2回植物全体に散布するだけでよい。植物が育っているうちは、散布しない方が安全である。 2)農薬にも有効期間がある。 農薬を一度散布すれば、夫れで害虫が死に、病気も治るというものではない。殺虫剤のうち、害虫の体に付かなければ効果のない薬は、散布したときだけ効果があり、後で飛んできた害虫には効果はない。だから、有効期間は散布したときだけなので、害虫を見つけたその時に散布しなければ効果はない。害虫を見つけたら、毎日でも散布することが大切である。 消化中毒剤といって、薬の付いた植物を食べると害虫が死ぬ薬のカルホス剤は10〜20日、ティプテレックスは4〜5日が有効期間である。 浸透剤といって、薬が水に溶けて植物が根から吸い上げた液を害虫が食べて死ぬ薬のエカチン・エストックスは20〜30日が有効期間である。 殺菌剤では、銅製剤で7〜10日、ジュネブ・マンネブ剤で3〜4日、ペンレートは病状によっては1日〜2日間隔で数日続けて散布するとよい。 3)農薬の薄め方 農薬を水に溶かすとき、100倍液、500倍液、1000倍液などといわれるが、実際にとかす場合、何倍といわれても具体的によくわからない。また、正確に倍数通り溶かせといわれても難しい。 そこで、簡単な表を例にすると 別表 こんな方法もある。 一升瓶とか醤油のリットルビンいっぱいの水に茶さじに普通にして一杯の薬を混ぜると約1000倍液になる。一升瓶は1800CCでリットルビンは2000CCだから、リットルビンには薬を少し多く入れるとよい。 農薬は、できるだけ正確に計量し、必要な量だけ水に溶かして使うことを原則とするが、多少のことは気にしなくてもよい。大切なことは、薬の入っている袋や容器に重要なことが書いてあるのでよく読んで使うことである。 農薬の散布には噴霧器を使うようにする。如雨露を使うことがあるが、如雨露では葉の裏側に散布することが難しいし、平均にしかも完全に散布することが難しいので、どうしても薬が無駄になることが多い。如雨露では噴霧器の5〜6倍もの薬を使うことになる。 (11)家庭で作る花 1)花づくりをしよう 空き地をそのままにしておくと、どうしても草が生え醜くなってしまう。せめて、自分の家の周りに空き地があるときは、花や野菜などを作って楽しみたいものである。自分の花畑といっても自分たちだけが楽しむものではなく、近隣の人、道行く人も楽しむのである。 「美しい町づくり」は、どこの町でも町づくりのねらいの一つでしょう。美しい町づくりは、美しい家庭の庭づくりが基本です。町の人一人ひとり、一戸一戸が美しい庭をつくると、町全体が美しくなる。庭や空き地がなければ、容器を使って花づくりができます。一鉢のパンジーの花を玄関先に置くだけでも、りっぱな花づくりです。 2)花壇を美しく見せるコツ 花壇(花畑)を大きく分けると、自然風につくる「花そう花壇」と、美しく彩りをつけてつくる「模様花壇」に分けられる。家庭でつくる花壇は「花そう花壇」が主で、広い庭や芝生がある場合は「模様花壇」となる。札幌大通りの花壇は「模様花壇」である。 札幌大通りにある花壇を見た人は気が付いたでしょうが、花壇の地面が見えない。花壇を上から見ると土が見えない、全部が花で覆われている。このような花壇こそ理想的な花壇である。しかし、どんな花を植えても花壇の土が見えないように植えることは難しい。例えば、ヒマワリ・グラジオラス・アサガオ・ユリ等、このような花は花壇の土が見えないようには植えられないが、それはそれなりによいので、土が見えてもよい。パンジー・サルビア・カッコウアザミなど、主に1年草であるが、やはり花壇の土が見えないようにたくさん植えることが、美しく見せるコツである。できれば、1区画に同じ種類の同じ色の花があればよい。そのためにも、花の特徴をよく知って、大きさ・数・色などを考えて植えることが大切である。 3)地域の自然を知ろう 地域の自然条件を知ることも、花壇づくりの一歩でしょう。標津のように寒く、潮風が吹き、春が遅い、霜が早い、こんな地域ではどんな花が良いのかを知って花づくりをすることが大切である。せっかく時間と労力をかけて苗づくりをしても、結果として咲かなければ何にもならない。やはり、地域の自然条件を知って、そこに育ち花が咲くものを選んでつくることこそが大切である。 図 花壇を美しく見せるコツ
4)容器を使って花を育てる 土地がせまくて花畑をつくれない。家の前の道路も舗装されて土が見えない。など、花畑の確保ができないときは、容器を使って花を育てるとよい。これも楽しいものである。 花を育てる容器にはいろいろあり、最近ではプランターを安く販売しているので気軽に使える。プランターは使いやすくいいものである。大きさや深さ、色も多種多様なので自分が気に入ったものを選ぶとよい。 大きいと重く、持ち運びが大変。浅くて小さいと乾燥しやすく、水やりが大変。しかし、球根類(チューリップ・ユリ・グラジオラスなど)は、少々深い方がよいが、20p程度の深さでほとんどの1年草が育つ。 プランター以外に、空き箱・樽・火鉢などを利用している人もいるし、手作りもおもしろい。 置き場所は、玄関前・道路渕・テラス・ベランダ・ブロック塀の上・屋上などや、最近では壁につり下げ人もある。 低いところに置くと、あまり乾燥しないし手入れも楽である。高いところに置くと、乾燥して水やりが大変で、肥料も面倒になり、手入れをしないで枯らすことがある。手入れのしやすい場所に置く方が無難かもしれない。手入れのしにくい場所に置くときは、プランターのように底に水がたまるものを使うとよい。 住宅の壁につり下げる場合は、水を切らさないようすることと、水をかけて壁を汚さないことに気を付けたい。 @容器の中に入れる土 容器は少々大きいといっても植物にとっては狭いところである。そこで育つのだから、少しでも育ちやすい条件を与えてやらなければならない。 植物が育つ条件はいろいろあるが、その一つが土である。 土は、水はけの良いこと、肥料分が多く肥えていることがよい土の条件なので、このような土を容器に入れて植物を育てることが大切である。 容器に入れる土は、畑の土に腐葉土を20〜30%程度混ぜ、水はけをよくするために小豆粒程度の火山灰を10%位混ぜるとよい。しかし、これでは肥料分が足りないので、植物の育ち具合を見て追肥しなければ肥料切れとなり、良い育ちは望めない。 容器に土を入れる場合、底には赤玉土か火山灰のやや大きめな粒のものを入れ、その上に畑の土と腐葉土、火山灰を混ぜた土をれて種をまき、苗を植える。容器を動かす予定があるときは、重い土より軽い土の方がよい。 図 プランターの土の入れ方
どんな草花でも容器で育て、花を咲かせればよいというわけではない。 容器で育て、花を咲かせる草花は、乾燥に強く、草丈が比較的短く、花の咲く期間が長い1年草や、四季咲き性の多年草で、草丈の短いものがよい。 容器の大きさは、置き場所にもよるがあまり大きいものは移動に苦労するので、程々の大きさを選んだ方がよい。 植える草花は、一つの容器に1種類とし混ぜない方がよい。例えばパンジーならパンジーだけにする。 A容器で育てるのに向いている花 1・2年草では アゲラタム・ホウセンカ・コリウス・キンレンカ・ケイトウ・サルビア・センニチソウ・マリーゴールド・ペチュニア・パンジー・マツバボタン・ハボタン・ロベリア・ワスレナグサ・サフェニアなど 宿根草では アルメリア・イカリソウ・ミヤマオダマキ・キキョウ・オミナエシ・デージー・スズラン・ヒメジャガ・プリムラ・ハナショウブなど 球根類では アイリス・グラジオラス・クロッカス・クロユリ・コルチカム・スイセン・チューリップ・ヒアシンス・ムスカリ・ユリなど 狭い容器の中で育つ草花なので、日常の手入れに気を付けなければならない。育っている状態を毎日よく見て、水やり・肥料・病気・害虫や咲き終わった花の摘み取りなどなど気を付けることが沢山ある。時には、病気になった株を抜き取り新しい株を植えてやることも必要となる。 容器で花を育てる場合、なんといっても水やりと肥料が大切である。どんどん育っているときは、よく乾くので水を十分やることが必要であり、肥料が切れたと思ったら油粕や骨粉などを花の根元に入れてやったり、ハイポネックスの1000倍〜2000倍の液をかけてやると良い。 畑に植えた草花と違って、容器に植えたものは日常の手入れで草花の寿命まで決まってしまうので、細かい手入れが大切である。 (12)花づくりは土づくりから 1)土づくりの基礎 花づくりの基礎は、土。土が草花を育て、花を咲かせ、実をならすので、いい土か悪い土かで、いい花を咲かせるかどうか決まるといっても良い。 火山灰や砂の多い土、粘土が多く堅い土は悪い土なので、ほかの材料を混ぜて改良しなければならない。鉢に使う土はたくさん使わないので、腐葉土や堆肥を十分に使っていい土にできるが、花畑の場合は、20〜30pの深さまで改良しなければならないので、手間と時間がかかることを考えなければならない。 先ず、有機質肥料(堆肥・草・野菜のくず・魚の残滓・広葉樹の葉・ヒトデ・ウニの殻・エビ、カニの殻など)を土に混ぜてやることが第一である。有機質肥料といっても、ほとんどのものはそんなに肥料分はないが、土に混ぜると、標津の土のような酸性の強い土の酸性化を弱めたり、土を柔らかくして水はけをよくし、空気の流通をよくするなど、とにかく植物を育てるいい条件の土をつくってくれる。 いい土をつくる第1歩は、有機質を土にたくさん混ぜてやることです。 2)良い土悪い土の見分け方 土は黒いもの、黒い土ならいい土だという思いこみはやめた方がいい。たしかに、耕した畑を見ると土は黒々としている。特に火山灰の土は黒い色をした土が普通である。標津の土は、火山灰の土だから黒いのが普通ということになる。元々黒い土と、元は赤い土が有機物を入れ、長い時間をかけて黒くなった土とでは同じ黒い土でも土の性質が違う。 標津の土は、元々黒いが有機物の少ない土で、決して良い土とはいえない。有機物をたくさん混ぜて黒くなった土こそいい土といえる。 外見上で土の善し悪しを見分けることは難しい。正確に見分けるためには土を分析してみなければわからない。 そこで、簡単な見分け方の一つは、雨上がりの翌日土を片手で一握り握ってみると掌の形になり、これを指先で押すとすぐ崩れて元の土に戻るようなものがいい土である。 良くない土は、握っても掌の形に固まらなかったり、固まりすぎて堅くなりほぐれない。 良くない土は気長に改良していい土にしたいものである。 3)良い土にするための第1歩 花畑に苗を植えるとき、移植ごてを片手に持ってちょこちょこ土を掘って植えているようでは、いい花は咲いてくれない。よく耕して土の条件をよくしてやることが大切なので、移植ごてでは耕せない。 耕すときはいつも深く耕すとは限らない。10p程度でも良いが、年1回は深く耕した方がよい。標津のように寒いところではほとんど年1回しか耕さないので、深く耕した方がいいわけである。深く耕すときは、土を混ぜるのではなく、上の土を下に、下の土を上にする「天地返し」にする。どうしてかというと、下にたまっている肥料分を表面に出して植物が利用できるようにし、土の下の方に空気を入れて、根の育ちをよくするためである。また、秋に「天地返し」をすると、冬の寒さで害虫が死ぬ。 「天地返し」のときは、石灰をまいて土の酸性を弱くすると一層良い。 4)いや地(忌地)に気を付ける 昔から連作(同じ所に同じ植物を何年も続けてつくる)ではなく、輪作(毎年作物を変えてつくる)にしなさいといわれる。同じ植物でなくても、同種の植物は同じ植物と考えてよい。ある植物を育てたところに、次の年も同じ植物や同じ仲間の植物を育てると、手入れが良くても育ちが悪くなったりすることがある。このような現象を「いや地現象」といっている。つまり、その土が「いや」になった、嫌いになった、そのために育ちが悪いということである。 アスター・ペチュニアを同じ所に続けて育てると、立ち枯れ病になったりして、よくそだってくれない。 野菜では、トマト・ナス・ピーマン・イモなど、ナス科の仲間も「いや地現象」を起こします。「いや地現象」は1年間ほかの植物を育てるとほとんど起こさないので、ほかの植物を育てた方がよい。 キクを植えて何年かすると、やがて育ちも悪くなり、花も咲かずに消えてしまう。これも「いや地現象」で、4・5年に一度は移植が必要です。 畑が狭いときは、深く耕すか別なところから土を持ってきて入れ替えてやれば、ある程度防げる。 5)酸性を好む植物・嫌う植物 植物によって、酸性の土を好むもの、平気なもの、嫌うものがある。 ツツジ類・シャクナゲ類・ハナショウブ・サツキ・アザレア・スズランなどは酸性の土が好きで、よく育ち花を咲かせてくれる。 ツバキ・アジサイ・クチナシ・アオキ・エビネ・ギボウシなどは酸性の土でも平気でよく育ち、いい花を咲かせてくれる。 しかし、キンセンカ・カスミソウ・ジャーマンアイリス・スイートピーなどは酸性の土を嫌い、酸性が強いと、育ちも悪く花つきも悪い。ときには、枯れてしまうこともある。 このように、酸性の土を好むものや、嫌いなものがあるので、植える植物によって土を改良する必要がある。酸性を弱めるための石灰や炭カルを全体に散布することはしない方がよい。 |
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