1.和名 オショロコマ
2.科目
3.学名 Salvelinus malma
4.地方名
5.アイヌ語名
6.英名 DOLLY VARDEN
7.ロシア名
8形態・生態
北海道にはオショロコマという名のイワナがいます。渡島半島南部や日高の南部での生 息の記録はありませんが、それ以外の地域なら川の源流付近など渓流に出かけていけば出会える可能性の高い魚です。札幌近郊や知床半島では、今はとても泳ぎ上ることができな いと思える落差5b以上もある滝の上にもいますので、かなり古い時代から北海道の川に棲みついていた魚と考えられます。

オショロコマという名前は、魚とは思えない一風変わった呼び名です。羅臼町にはオシ ョロッコ(磯の窪みたる所:永田方正著「北海道蝦夷語地名解」)という川がありますが、 この魚の名前がアイヌ語由来かどうか定かではありません。

初夏の頃のオショロコマは、銀色に輝く魚体にピンク色の小さな斑点がある美しい魚で す。11月の産卵期になると全体的に黒っぽい体色となり体側の赤点と腹側の赤い色が鮮 やかに目立つようになります。体の色の変化は、1匹づつ区別が可能なくらい個性的です。

北海道のオショロコマは、川で一生を過ごす(陸封型、または河川残留型と呼ばれる) のが大半です。3〜5年目くらいで大人になり、体長は10〜30センチくらいになります。川で一生を送る場合は、大きくなりません。 人をあまり恐れない魚ですので釣るのは比較的簡単です。釣りあげた魚をその場に放流 してもまた釣れてしまう能天気なところがあります。

オショロコマは、森林の伐採が進んだ1970年代に急激に数が減りました。しかし、 森林が回復してきた1990年代には、生息数が回復しつつある場所もあります。 日本の中でもっとも寒冷な気候の地域の一つとして知られている知床半島は、特異的にオショロコマが多い地域です。知床を代表する淡水魚といったらオショロコマと言っても いいくらいこの地域の川では一般的な魚です。 そんな気候風土を反映してか、標津町を含む知床半島周辺の海では、5〜8月頃降海型 のオショロコマがマスの定置網などで捕れます。

降海型のオショロコマは、川にいるオショロコマの特徴である赤い斑点が見えない場合 が多く、アメマスのような白い斑点があります。ただし、その斑点の大きさは瞳より小さ く、また背中の色が青黒いことでアメマスとは区別ができます。今まで根室海峡で捕れた オショロコマの内最大のものは、体長70センチ、体重3.4キロ、推定年齢12年魚の オスです。これは、1992年6月4日に羅臼町峯浜で漁獲されたものです。

オショロコマは北太平洋北部に広く分布しています。北へ行くに従い降海型がたくさん 出現するようになります。知床半島付近は降海型が出現する南限の可能性があります。 また、オショロコマは、20度を越える水温の高い状態が苦手な魚です。河畔林がなく なると夏の川の水温は高くなります。標津町内の川を見ていると森林が豊かだとオショロ コマがたくさんいる印象があります。オショロコマは、森の豊かさを教えてくれる「ものさし」になる魚という気がします。
9.利用

10.メッセージ

11.写真・図版

産卵行動中の河川残留型オショロコマの番い。左:メス、右:オス。
12.参考図書
13.著者 筆者名 : 小宮山 英重
連絡先 : 標津サーモン科学館
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