1.和名 ベニザケ(降海型)、ヒメマス(陸封型)
2.科目
3.学名 Oncorhynchus nerka
4.地方名
5.アイヌ語名 カバチェップ、チップ
6.英名 SOCKEYE SALMON, RED SALMON,KOKANEE
7.ロシア名
8形態・生態
サケと言えば北海道ではシロザケのことを言いますが、関西ではベニザケを指すそうです。高級魚のベニザケは、身の色が紅色です。だからでしょうか、おいしいサケは身が赤いと信じられ ている節があります。

ベニザケは、身が紅色なだけではなく、卵も紅色をしています。そして、産卵期の体の色(婚 姻色)も頭部を除くほぼ全身が紅色になることでも有名です(一部には黒っぽい個体もいます)。 カナダでは、4年に一度の割合で繰り返されるフレーザー川のベニザケの大量遡上を「レッドラ ン(直訳:赤の遡上)」と呼んでいます。ベニザケと赤い色は切っても切れない関係のようです。 ベニザケの赤さの素は、主にアスタキサンチンという色素です。この色素は、海の植物プラン クトンが体内で合成します。それを動物プランクトンが食べ、さらにその動物プランクトンをベ ニザケが食べることによって色素が体内に取り込まれ、身が赤くなります。卵や皮膚も赤くなる のは筋肉中のアスタキサンチンが移動するためというメカニズムは約15年前の研究で明らかに されたことです。

根室海峡では、サケの定置網などでベニザケも漁獲されます。主な漁獲時期は6月から8月ま で。平均的大きさは、体長53三ンチ(68センチから38センチ)、体重1.8キロ(4.1 から0.7キロ)です。シロザケ(主に4〜5年魚で成熟)より小さく、カラフトマス(2年魚 で成熟)やサクラマス(3〜4年魚で成熟)と同じくらいの大きさです。年齢は4〜5年魚が大 半で、まれに六年魚や三年魚が混じっています。

根室海峡でとれるベニザケは、顔で雌雄の区別 ができますので、大半が秋には成熟する大人のベニザケと推定されます。年齢の割には体が小さ いので、成長効率のいい魚とは言えません。 鱗を分析しますと根室海峡のベニザケは淡水(湖)で1〜2年生活してから海での生活を始め ています。年齢構成はシロザケと似ていますが、シロザケ(平均体長63センチ、平均体重3キ ロ)よりも魚体が小さいのは、えさが豊富な海での生活がシロザケより短いのが原因かもしれません。

現在の日本にはベニザケが恒常的に天然遡上する川はありません。かつては、陸封型のベニザ ケ(ヒメマス)が阿寒川水系の阿寒湖と網走川水系のチミケップ湖に生息していただけでした。 降海型のベニザケが繁殖しているのは択捉島より北で、川の途中に湖がある水系でした。 では、現在の根室海峡で漁獲されるベニザケはどこが故郷なのでしょうか。鰭を切り取った標 識魚から風蓮湖から放流されたと推定されるものが標津の前浜で1997年8月1日に一匹漁獲 されています。その他、苫小牧近くのウトナイ湖がある安平川、屈斜路湖や塘路湖がある釧路川、 そして西別川からも放流されていますので、北海道から放流されたものが漁獲されている可能性 があります。 鱗で成長の過程を分析しますと、1年目の淡水域での成長の様子から自然産卵で育ったと思わ れる個体が数多く見られます。

天然遡上する川がある択捉島は,標津から近いですので、択捉島のベニザケが回遊してくるこ とも考えられます。しかしながら、択捉島のベニザケは7月の一時期に産卵のため一斉に川に遡 上してしまうそうです。7月下旬から8月でも天然産卵個体と推定できるベニザケが根室海峡で 捕れていますので、これらのものは遡上時期が遅くまで続き(10月上旬まで)、アジアの水域 でとれるベニザケの大半を占めるといわれているカムチャッカ半島のオゼルナヤ川産の一部が回 遊してくる可能性が考えられます。 この仮説が当たっているなら、やはり「根室海峡はさまざまな地域の魚をはぐくみ育てる豊かな海だ」と言えるでしょう。
9.利用

10.メッセージ

11.写真・図版
西別川産の成熟したベニザケ(メス)
12.参考図書
13.著者 筆者名 : 小宮山 英重
連絡先 : 標津サーモン科学館
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