1.地名 ポー川
2.読み ポーガワ
3.解説
 伊茶仁川の南支流。この川の下流一帯が標津町ポー川史跡自然公園として旧観が保存されていて床しい。ポー川の由来はよくわからない。他地の類例から見て何かの地名が略された形らしい。

 前のころ札幌で同好の知人からこの名の由来を質され、分からないというのも済まないと思い、明治30年図がこの川の合流点近くにイチャニ・ポ(ポは小さいという意味の指小辞)があるので、或いはその前略形かな、と返事を致しました。或いはその考え方が当地に伝わったかも知れません。

 だが、今回当地に参りますについて、改めて旧記、旧図を眺めていたら、それを思い出して、しまったと冷や汗を流しました。うっかり当てずっぽうを云ってしまったらしいのです。

 松浦武四郎の図面でそこを調べて見ると、この川の名はフルホクだったらしい。女奈之日誌は「フルホク。小川なり。此処に少し坂有て、其傍を川が通ると云儀によって号るとかや」と書かれていました。その形ならば簡単に原形に戻すことができます。フル・ポクhur−pok(丘の・下)だったのでした。

 フルは丘、或いはその斜面の意味で坂とも訳されてきました。川名の場合には、その後にペッ(川)ぐらいの言葉が略された形でしょう。語義はそれでいいのですが、ポー川がそれにあった川かどうか見たいので、そこで仕事をしておいでになる椙田さんに連れて行って戴きました。行って見ると正に語義通りの川でありました。公園で昔の住居跡の一群を大切に保存しておられるあの台地がフル(丘・坂)の地形で、その下(ポク)を流れている川がポー川、つまりフル・ポク川なのでありました。

 アイヌ語の語尾のkは不破裂音で、和人には聞き取りにくいので、この名はフルポと聞こえ、前略されてポー川となったのでは無かろうかと、今になって思うようになり、深く後悔しています。なお明治30年図では濁点を打ってボー川となっています。
4.地図 工事中
5.参考文献 「メナシ地方のアイヌ語地名―標津を起点として―」山田秀三
(昭和62年7月12日(日)に標津町教育委員会が開催した山田秀三先生の文化講演会を基にしています)
標津町百科事典 / 標津地名の由来 /  /  /  /
標津町 (c) copyrights 2000, Town of Shibetu. All rights reserved.