(3)植物の生長と花が咲くわけ 植物は成長の過程によって二つに分けられる。 一つは栄養成長といって、植物が芽を出し、少しずつ大きくなり、やがて茎や葉がよく茂り大きくなっていく。すなわち、植物が体を作る時期のことをいっている。 二つめは、植物の体がある程度できあがると生殖成長といって茎や葉が成熟する。こうなると葉になる芽(葉芽)の一部が花になる芽(花芽)に変わり、花を咲かせ実を付けるようになる。葉になる芽が花になる芽に変わったということである。このような時期を生殖成長といっている。花芽ができる時期や場所は植物によって違う。 このようにして植物は花が咲くわけである。また、日照や温度などで植物の体に花になるホルモンが増え、花になる芽が動き出して花が咲く。 花になる芽ができてから花が咲くまでの期間は植物によって違う。例えば、キクやゼラニウムなどは40〜60日位、フクジュソウ・スズラン・ハナショウブ・シャクヤクなどは3か月から6か月もかかる。だから、春一番に咲くフクジュソウは秋に掘ってみると、花になる芽が付いているのがよくわかる。 花になる芽のできかたは、日照時間の長さによるものと、温度によるものとがある。日照時間の長さによるものには、日照時間が長くなると花が咲くもの(長日性植物)と、日照時間が短くなると花が咲くもの(短日性植物)があり、温度によるものは一時期低い温度に当てると花が咲くので、このような花は低い温度に当てること(低温処理)が必要である。また、日照時間や温度に関係なく育って花が咲くものなど、植物によって違うものである。 (4)多年草を育てる土も植物の種類によって違う 植物は植物によって好みの土が違うのもである。一般的には、水はけ・水持ちがよく、肥えた粒の粗い土がいいようだ。しかし、園芸種は一般的なよく肥えた土の方がよいが、山野にある自然に育っている植物は少々やせた土でもよく育つものが多い。植物によっては、肥料を好むものがあるので、成長をよく見て肥料を入れる必要がある。 土が硬くなる粘土質の場合は、堆肥などの有機質を入れて水はけを良くし空気の流れをよくしてやることが大切である。 多年草の全部ではないがやや酸性の土を好むものも多いので、花畑の土の酸性を改良しなくてもよい。 ジャーマンアイス・アルメリア・スターチスは中性かアルカリ性の土がよいので堆肥、骨粉、木灰、石灰類(炭カル)を入れてよく耕し、酸性を弱めて育てた方がよい。 (5)多年草の植え替え 多年草は株分けをして増やすことが多い。株分けは、一般的には春がよいとされているが、植物によっては花が終わったすぐ後や秋に株分けをして植え替えるとよいものもある。 成育中に株分けをしてもよく根が付くものもあるが、成育中は株分けをすると根が傷むことが多いので、なるべく根の傷みの少ない時期を選ぶ方がよい。 (6)多年草の株分けや植え替え時期 1)5月上旬から6月上旬頃まで ジャスターデージー・ギボウシ・キク・アスチルベ・サルメンエビネ・オダアキ・クレマチス・スイレン・リンドウ・ゼラニウム・ベコニア類・クリンソウ・サクラソウ・ホタルブクロなど 2)花が終わったすぐあと ハナショウブ・アヤメ・ジャーマンアイリス・アルメリア・イカリソウ・ケマンソウ・タツタソウ・ヒメジャガ・ジャガなど 3)9月上旬から下旬頃まで シャクヤク・スズラン・フクジュソウ・プリムラ・ポリアンサスなど 多年草は一度植えたら数年はそのまま育てるので、植えるときに日当たりの良い場所に向く花、半日陰に向く花、日陰がよい花などよく考えて植える場所を選ぶことが大切である。 また、シャクヤクのように根が広く長い花などは、植える穴の大きさ深さを、広く深くすることや、堆肥を穴の底にたくさん入れるなど植物に応じた植え方も大切である。多年草の場合、一般的にはやや深めに植えた方がよいようです。
(7)球根 球根は多年草であるが、寒さに弱いものは秋に堀り上げ、凍らないように貯蔵し、寒さに強く凍結に耐えるものはそのままにしておくのが普通である。 1)花畑で冬を越せる寒さに強い秋植球根 アイリス・クロッカス・コルチカム・スイセン・チューリップ・ムスカリ・ユリ・モントフリージアなどである。 2)球根の育て方 球根を育てるためには、いい球根を手に入れることである。いい球根とは、球根の皮につやがあり、固くしまって、重いものが一般的である。皮がむけていたり、傷が付いていたり、しなびて柔らかくなっているような球根は避けた方がいい。 ユリは表面がみずみずしくて球がしまっているものがよい。 @日当たりの良い場所に植えた方がよい ほとんどの球根類は日当たりを好むので、日当たりのいい場所を選んで植えた方がよい。日当たりの悪い場所で育てると、弱々しく育ち、草丈は長くなるが花つきも悪く病気にもかかりやすくなる。 A土は選ばないが、有機質のたくさん入った肥えた土がよい 土は他の花が育つ土であれば選ばなくても良いが、水はけの良い土で堆肥などの有機物がたくさん入っている肥えた土の方がよい。 土をよく耕して植えることも大切である。 B植え方 秋に植える球根は、きゅうこんの幅の3倍位離して植えた方がよいようである。花畑がせまい場合は球根がふれあう程度の狭さでも十分に花が咲く。 春植の球根は、草花の種類によって大きな違いがある。 ダリア・カンナなどは、なるべく広く取った方がよく、グラジオラスは球根幅の2〜3倍位あった方がよい。 球根を植えるときの深さは、球根の大きさによって違う。大きな球根は深く、小さな球根は浅くなる。普通は、球根の大きさの3倍位と考えればよい。 6p位 クロッカス・クロユリ 9p位 チューリップ・アイリス・ムスカリ・コルチカム 12p位 ヒヤシンス・スイセン・スカシユリ 15p位 テッポウユリ・オニユリ・ヤマユリ・カノコユリ・ダリア
C秋植え球根を植える時期 9月中旬から10月中旬頃まで チューリップ 9月上旬から9月下旬頃頃まで スイセン 9月中旬から10月上旬頃まで クロッカス 9月下旬から10月下旬頃まで アイリス・ムスカリ 10月中旬から11月上旬頃まで ユリ D肥料は、春に芽が出てから入れるとよい。 球根類は、球根に育つための養分が含まれているので、特別にやらなくても花は咲くが、次の年も花が咲くような立派な球根にはならない。毎年球根を買って育てるのはまことにもったいないので、花も咲かせ、球根も次の年に使えるように育てたいものである。 そのためには、春に雪が解けたらすぐ芽が出るので、芽が出たらすぐ骨粉、油粕を芽の周囲にバランスよくまいておくとよい。 秋に植えるときは、堆肥を根元に入れてやれば理想的である。 このようにして育てると、花も咲き、球根も立派に育つ。しかし、グラジオラスやユリを切花として使う場合、根元から葉も切ってしまうと球根の育ちは悪くなる。グラジオラスは、花柄が長いので根を残して切ることは可能だが、ユリの場合は葉を残して切ると短くなって切り花としては価値がなくなるので、やむを得ない場合もある。 チューリップは球根を育てるために栽培するときは、花が咲く少し前に花を摘み取って、葉は全部残して球根を育てる方法で栽培している。
E球根の堀り上げ 秋植の球根は、花が終わって葉や茎の緑色が少なくなって黄色になったら掘ってもよい。植えたままで冬を過ごす寒さに強い球根はそのままでよいが、植え替えをするときは、やっぱり茎や葉が黄色になってから掘り上げて植え替えるようにする。 秋植の球根は、球根が乾かないうちに植え替えるものと、掘り上げてから一時期日陰で乾燥してから植えるものがある。 ユリ類は、掘ったら乾燥させないですぐ植えるようにし、チューリップは8月上旬から9月上旬頃掘り上げ、日陰でよく乾燥させてから10月中旬頃までに植えるようにする。 球根を植えるとき、一つしか植えなかった球根が二つ三つとくっついているので、一つずつにして植え増やすようにするとよい。
春植え球根は、凍らせてもひどい乾燥でも球根は枯れてしまうので、上手に保管することが大変である。 ダリアの場合は、掘り上げたら球根に土を付けたまま半日ほど日に当て、少し乾燥してからビニール袋に入れてから段ボール箱にしまい、室温が5〜6度C位の暗い場所で貯蔵するとよい。モミガラ・オガクズがあればそれらをよく乾燥して球根の土を落とし、モミガラ・オガクズを段ボール箱に入れ、その中に球根を入れて貯蔵する。室温は5〜6度C位で、やはり暗い場所がよい。 グラジオラスは、球根をよく乾燥して球根だけを袋に入れ、5〜6度C位のやや乾燥した暗い場所に貯蔵すればよい。 球根ベコニア、カンナは、霜が来る前に掘り上げ、茎や葉が緑色に成長していない場合は鉢に入れ、室内で育てればよい。葉や茎が傷んだり、枯れたりしている場合は、球根を乾燥させないようにして、鉢か発砲スチロールの箱に川砂か火山灰を入れて植え、5〜8度C位の場所に置くとよい。凍らせたり乾燥させたりすると球根が枯れるので、10日に一度くらいは水をやるようにする。火山灰は水持ちするが、川砂は水持ちしないので、川砂の場合は一週間に一度くらい水をやるようにする。水のかけすぎは球根を枯れさせることがある。 |
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